
「よかったね。有香ちゃん」
「うん。よかった。無謀かと思ったけど、あきらめないで、中条の店に、服置いてもらっててよかった……」
「やっぱり、才能があるとちがうね。あたしなんてなんにも才能がないから、ちょっとうらやましいかも……」
思わずつぶやいちゃったら、女子たち、し~ん。
うわ……はずかし~。同情モード。
みんな、あたしがどんなにアホっ子か、よくわかってるんだもん。
「……綾ちゃん。たぶん、それちがうよ」
有香ちゃんが、ぽつんとつぶやいた。
「……え?」
「『才能がある』って、最初からわかってて、はじめる人なんていないと思う。夢っていうのはさ、好きなことを、やめたくても、やめられなくて。ヘタでも、自分に向いてなくても、どうしても楽しくて、続けていってしまうことだと思う。
それを人に受け入れてもらえることなんて、ほとんどないんだけどね。だけどたまに、こうやって受け入れてもらえたとき、すごくうれしくて、幸せで。だから、もっと、続けていっちゃうんだよ」
「……受け入れてもらえたとき……?」
きのうのヨウちゃんの声が、頭によみがえってきた。
――……綾……オレのこと、受け入れてくれる……?――
ぼぼぼぼって、ほっぺたが燃えあがった。
「……え? 綾ちゃん……?」
「な、なんでもないっ! なんでもないのっ!! 」
有香ちゃん、きょとん。
女子たちもきょとん。
あ、あれ……?
「夢」と「恋」って、なんか似てる……?
だって、あたしもおんなじだった。
ヨウちゃんに受け入れてもらいたくて、受け入れてもらいたくて。でもヨウちゃんにフラれちゃったから、自分に自信がなくって。
それでも、どうしても、やっぱり、ヨウちゃんのことが好きで。
ヨウちゃんを好きでいることを、続けていったんだ……。
「それで、クリスマスはみんなどうするの~?」
体育館で、二学期の終業式があって。
教室にもどったら、リンちゃんたちの声がきこえてきた。
「紀伊美はベイランドで遊園地デートでしょ?」
「ううん。ベイランドはナシになった」
「え~っ!? カレシとなにかあったの~っ!? 」
「ディズニーランドに誘われたから」
「って、東京行くの~っ!? そっちのほうがおいしいじゃん~っ!」
そっかぁ……。
冬休みに入ったら、すぐに、クリスマスなんだな……。
リンちゃんたちのもりあがりにくらべて、真央ちゃんの席にあつまった、あたしたち三人組は、あいかわらず、まったり。
「……なぁ、中条ってさ。女子たちといっしょにいるの、やめたんだな」
真央ちゃんが言ったから、「あ、そういえば……」って、あたしは後ろのロッカーを見た。
ヨウちゃんは、大岩たちと、ロッカーの前で立ち話している。
ちょっと前まで、リンちゃんたちがヨウちゃんの席にあつまって、ヨウちゃんは女子たちにかこまれてるっていうのが、ふつうだったんだけど。
いつからだろう……?
「あいつもさすがに、誠に押されまくって、性根を入れかえたんかな? きのうのデコチューのあとも、かなりへこんでたし。きょうも引きずってるかと思いきや、いつもどおりにもどってるから、それはそれで、おどろいたけど」
「……うん~」
ぼんやりきき流してたら、「綾」って、真央ちゃんたらデコピン。
「い、痛ぁ~。ひど~い、真央ちゃん~」
「だって、綾。うちの言ってる意味、わかってる? 綾って、ホンット天然だけど、アホっ子も大概にしないと、知らない間に、中条もどっかに行っちゃうぞっ!」
「ええっ!? そんなのヤダっ! あたし、わかってるもんっ! きのう、ちゃんと本人からきいたもんっ!! 」
「……え?」
真央ちゃん、目を丸くしてかたまった。
有香ちゃんも、「手づくりの子ども服」って本を、ガタンてつくえの上に落として、目が点。
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