《3》 伝えたいこと4 - ナイショの妖精さん3
fc2ブログ

《3》 伝えたいこと4

  27, 2021 22:37
2021032619.jpg




 まぶしい朝の光が、六年生の教室に差し込んでくる。

 その入り口のドアに背中でもたれて、ヨウちゃんが有香ちゃんに、ピンク色の封筒をさしだしてる。


 あ、今、メガネの中で、有香ちゃんの目、かがやいた。

 両手で封筒をにぎりしめて、こみあげてくるうれしさをかみしめてる。


 登校してきたクラスメイトたちは、そっちに目をやって、ザワザワ。


「え? どういうこと?」

「葉児が永井にラブレター? なんで? ……和泉は?」


 男子たちが、チラチラ、あたしの顔をうかがってくる。


 って。ようするに。


 だれがだれを好きかって、すでにクラス中、バレバレだってこと……?

 だったら、きのうより前に、だれか、あたしに教えてよ~。


 自分の席でほっぺたを抱えてふてくされてたら、ヨウちゃんと話し終わった有香ちゃんが、あたしに向かって、手をふった。


「綾ちゃ~んっ! おはよ~っ!! 」


 その声で、ヨウちゃんもこっちに顔をあげる。

 目が合うと、ヨウちゃんはほおを赤くして、視線を足元におろした。


 は、はずかし~。


 あたしのほっぺたも、熱くなっちゃう。


 きのう、浅山であったこと、あたしのつごうのいい夢じゃなかったんだ……。


「綾ちゃん、これ見て~っ!」


 有香ちゃん、ヨウちゃんからもらったばっかりの封筒をひらひらさせて、あたしの席にとんでくる。

 それを見て、また、クラスメイトたちはひそひそ。


 そりゃ、そうだよね。今の有香ちゃん、まるで、自分がもらったラブレターを、ライバルに見せびらかしに行く人みたいだもん。


 でも、それはないな。


 もし本当にヨウちゃんから告白なんてされたら、有香ちゃんはあたしを気にして、きっと落ち込んじゃう。


「綾ちゃん、やったよ~っ! わたしの服が売れたんだって~っ!!  それでね、これね。その服を買ってくれた子からのファンレターっ!」


 封筒には、ミミズがはったみたいな色えんぴつで、「ありかおねえちゃんへ」って書いてあった。


「あれ? 有香ちゃん、小物だけじゃなくって、子ども服も置いてたんだ?」

「うふふ。一着だけね。ほら、服って、好みがむずかしいし。小さい子の服だと、サイズが合わないと買ってもらえないでしょ? だから、わたしが『どうしても』ってたのみこんで、一着だけ置いてもらってたの。そしたら、きのう、お店に来た子どもづれのお客さんが、買ってくれたんだって」

「すごいじゃん、有香ちゃん! やっぱり、有香ちゃんの服のよさは、わかる子にはわかるんだよっ!」


 手を取り合って、ふたりではしゃいでとびはねてたら、女子たちがあつまってきた。


「すご~い、永井さんっ!」

「服、売れたんだ~、おめでとう~!!」


 明るい女子たちの会話に、男子たちついていけなくて、目をしぱしぱ。


「あれぇ? なんだか、女子たちがみんなして、あつまってる~」


 誠の声がきこえたと思ったら、誠の後ろから、真央ちゃんも教室に入ってきた。


「あ、真央~っ! きいて~っ!! 」


 有香ちゃん、やっぱり、ハイテンション。

 ズラッと、せいぞろいした女子たちの真ん中で、有香ちゃんは手紙を開いた。


『ありかおねえちゃんへ。ふくをつくってくれて、ありがとう。とってもかわいくて、ようせいさんみたいです。ピアノのはっぴょうかいが、たのしみです』


「く~……字がカワイイ~」


 有香ちゃんが、手紙を抱きしめる。


「この子、ピアノの発表会で、有香がつくった服を着るのか~」

「ねぇ、どんな服なの~?」


 封筒の中から、写真がピロンと一枚落ちてきた。

 手紙の子のお母さんが、わざわざ撮って、入れてくれたのかな? 一年生くらいの女の子が写ってる。

 濃いピンク色のチューリップをさかさまにしたみたいなワンピース。細い女の子の体にぴったりあっていて、チューリップのお花の精みたい。


「カワイイ~っ!! 」


 女子全員、目がハート。


2021032611.jpg



次のページに進む

前のページへ戻る




コミカライズ版もあります!!


【漫画シーモア】綾ちゃんはナイショの妖精さん


【漫画kindle】綾ちゃんはナイショの妖精さん




にほんブログ村


児童文学ランキング
スポンサーサイト



Comment 0

What's new?