
そうだよ。ぜったいヘンなんだって。
これ、誠が一回でも防御に失敗したら、たいへんなことになる!
「や、やめて~っ!」
あたしは、ワンピースのすそをひるがえして、ふたりのところへかけだした。
「う、ウエンディ! 近寄ったら危険だぞっ!」
誠ってば、こんなときまで、お芝居のフリ。
その誠の短剣を、ヨウちゃんの長剣がパッとはじいた。
短剣はくるくる回って、海の青いセロハンをはった舞台のゆかに、カランと落ちる。
誠、丸腰っ!
なのにヨウちゃん、誠の前に剣をふりおろす。
「だ、ダメ――っ!! 」
あたしは両手をまわして、後ろから、ヨウちゃんの腰にかじりついた。
「ヨウちゃん、やめてっ! それ以上やったら、誠が怪我するっ!! 」
ヨウちゃんの動きがとまった。
「――綾……」
あたしの腕に引っぱられて、黒いロングコートの足が、たたらを踏む。
バランスをくずして、ふたり同時に、ドスッと尻もち。
しんっとステージが静まり返った。
ヨウちゃんの背中に抱きついたまんまのあたし。
あたしに抱きつかれたまんまで、ぼんやり座り込むヨウちゃん。
その前に、ふらっと立ちつくす誠。
ハアハアと息をつく、自分たちが音だけがきこえてくる。
チクタク、チクタク。
背景の影から、時計の音が近づいてきた。
目をキラーンって光らせて、ワニの着ぐるみ姿の真央ちゃんが、青いセロハンの海をわたってくる。
大きな口を開けて、真央ちゃんのワニが、ヨウちゃんの頭をパクン。
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