《2》 ネバーランドへようこそ16 - ナイショの妖精さん3
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《2》 ネバーランドへようこそ16

  06, 2021 00:05
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 だって。なんだか、すごくつかれちゃった……。


 有香ちゃんのことが、かんちがいだってわかって。ホッとしたとたんに、ヨウちゃんてば、「話がある」とか言い出すんだもん。


 なに言われるんだろって、あたし、また、もんもん……。


「恋なんかしないほうが……ずっと気楽に、楽しく笑って暮らせるのかもしれないね……」


 ちょっと前のあたしが、そうだった。

 まわりが恋しておとなになっていく姿に、とりのこされたような、あせりがあって。

 だけど、「いつかは、妖精の世界に行くんだ!」って。胸にファンタジーを抱きしめてた。


 いつの間に、かわっちゃったんだろう……。


 ファンタジーはまだ、しっかりと胸の中にあるのに。


 あたしも、知らない間に、おとなの道を歩き出してた……。


「おまえら、アホなこと言ってんじゃねーよっ!! 」


 後ろから、低い声がきこえてきて、ハッとなった。

 ふり返る前に、大きな手のひらがのびてきて、ぐいと左腕をつかまれる。


 ……ヨウちゃんっ!?


「ピーターパンめ。ウエンディはさらっていくぞっ!」


 あたしをつれて、ヨウちゃんは、ぐいぐい誠からはなれてく。


「えっ!?  ウソっ! ちょっとっ!? 」


 フック船長って、このとき、こんなふうに割り込んでくるんだったっけっ?


「葉児……じゃなくて、待て! フック船長っ!! 」


 観客席の子どもたちは、息を殺して、あたしたちを見あげてるんだけど。

 背景の裏や舞台そでは、ざわざわ。

 だって、ピーターパンもウエンディもフックまで。なんか勝手に、やりはじめてるんだもん。


 舞台そでまで、あたしを引っぱり込むと、ヨウちゃんは、サッとあたしの腕をはなした。


「はい、次。海賊船のシーンっ!」


 自分で脚本を乱したくせに、エラそうに上から目線。

 それでも、その声で、みんなはペースをもどしたみたい。バタバタ、シーンの準備に動きだす。



 いったん幕がおろされて。

 次に幕があがると、そこは海賊船の甲板。

 あたしや、ジョンやマイケルや、島の子どもたちは、フック船長につかまってる。

 で。海賊船からつきだした板の上をわたって、海に落とされるっていう「板わたりの刑」をやらされるシーン。

 ふらふら板をわたっていたら、誠のピーターパンが、船のマストの上から参上!


「ウエンディ! 助けに来たよっ!! 」


 最初はここ、お姫さま抱っこで助けられるシーンだったんだけど。それはナシになったから。

 誠は、オモチャの短剣をつきだして、ふつうに、あたしと、ヨウちゃんの間に立ちはだかった。


 ここから……ウエンディの告白シーン。


 あたし、ごっくん、つばを飲み込んだ。




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