《2》 ネバーランドへようこそ15 - ナイショの妖精さん3
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《2》 ネバーランドへようこそ15

  30, 2021 22:02
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「さぁ、ウエンディ。いっしょにネバーランドへ行こう!」


 誠が、手のひらをさしだしてくる。


「行くわ。ピーターパンっ!」


 あたしは、誠の左手の上に、自分の右手をのせる。

 手をつないで、両手をひろげて。体育館のステージを右から左にバタバタ走る。

 背景は星空。あたしたちは空を飛んで、ネバーランドへ向かっているつもり。

 一歩先を行くのは、ティンカーベル役の青森さん。

 あたしたちの後ろを追うのは、ジョン役の森本と、マイケル役の山田。


「ウエンディ。右から二番目の星をめざすんだ! そこにネバーランドがある!」


 誠が白い歯を見せて、笑った。

 大道具の子たちが、ステージの後ろで、星空の絵の板の上に、別の紙をのせる。

 背景が、ネバーランドの島の絵にきりかわると、劇を見ていた下級生たちから、歓声があがった。


 きのう、ヨウちゃんにスパルタされたおかげで、セリフがスラスラ口から出てくる。

 そしたら、なんだか、本物のウエンディになっちゃった気分。

 ピーターパンといっしょに、妖精のダンスを見たり。人魚と遊んだり。インディアンの宴会にお呼ばれたり。


 ネバーランドって楽しいっ!


 だけど、黒い雲がうず巻いて、黒い海賊船があらわれた。

 船長はフック。大きなつばの海賊帽をかぶって、黒いロングコートのえりをたてて。ピーターパンを倒すためにやってくる。


「きゃ~! フック船長カッコイーっ!! 」って、下級生の女子たち、大はしゃぎ。




 それから、ティンカーベルが死にかけたり。ピーターパンが助けたり。

 バタバタのシーンが続いて。



 また、舞台に立ったあたしの前に、誠のピーターパンが手をさしだした。


「ウエンディ。おとなになんかなる必要ないよ」


 このセリフ、やっぱり、誠が言うほうが合ってる。

 ヨウちゃんなんてさ。声低くて、へんに淡々と読むからおとなっぽくて、ぜんぜんピーターパンって感じじゃなかったもん。


「……ヨウちゃん……」


 目の前で、誠がパチパチって、まばたきした。


 あ、しっぱい。

 声がもれてた。


「な~んだ。和泉がぼ~っとしてたのって、やっぱり、葉児が原因かぁ……」


 つぶやいたと思ったら、誠の両手がのびてきて、ガシっと、あたしの肩をつかんだ。


「ほぇっ!? 」


「ウエンディっ!!  おとなになんかなる必要ないよっ! だって、おとななんてさ。恋とか愛とか、ドロっドロで。相手を気づかって、自分を押し殺したり。ヤキモチ妬いたり。相手が何考えてるんだろって、うんうん考えつづけたり。苦しいことばっかりじゃんっ!

もう、そんなの考えるの、ぜ~んぶやめて、ぼくといっしょに、ずっと子どものままで、楽しいことだけ考えて暮らそうよっ!」


 え……? なに、そのセリフ……?


 二重のクリクリの目が、真正面からあたしを見つめてくる。


 もしかして……今の……誠の本心……?



「……そうだね、そのほうが楽しいのかも……」


 あたしの口からも言葉がこぼれた。




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