
うす暗い体育館の舞台そで。背景係がつくったダンボールの背景は、もうぜんぶ運び終わっていて、六年全員がそろってる。
舞台では二年生が、ハンドベルを演奏中。これが終わったら、いよいよ劇本番。
ちょいちょいって、肩をつつかれて、あたし、ハッと顔をあげた。
「なぁ、和泉ぃ~。もしかして、緊張してる?」
誠のクリクリ目が、あたしをのぞきこんでいた。
「……え? あ、ううん?」
「でもさ~。体育館来てから、和泉、ずっと、しゃべんないじゃん?」
ドキッ。
誠って、どうしてこう、人のことをよく見てるんだろ!?
視線を感じて顔をあげたら、ヨウちゃんの琥珀色の目と目が合った。
腕を組んでしらっとしたまま、横目であたしたちを見ている。
「話」ってなにか知りたくても、あんな無表情からじゃ、なんにも読み取れない。
「なぁ。……もしかして、葉児となにかあったぁ?」
「な、ないない!」
観客席から、わっと拍手が起こった。
ステージの上で、二年生たちがベルをわきの下におろして、おじぎしている。
それから「全体、右」。あたしたちとは反対側の、舞台そでに帰っていく。
「次は、六年生の劇。『ピーターパン』です」
司会のアナウンスが流れた。
今は集中っ!
昨晩、ヨウちゃんはずっと、あたしの暗記につきあってくれた。
せっかく覚えたセリフを、イッコも頭から落としたくない!
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