《2》 ネバーランドへようこそ10 - ナイショの妖精さん3
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《2》 ネバーランドへようこそ10

  12, 2021 22:23
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「ちょっと、なに、みんなして、なっとくしてんのよっ!?  こんなアホっ子のどこがいいのよっ!? 」


 リンちゃんてば、あたしの顔を指さして、しつれい。


 でも。え? なにっ? ……どういうこと?


「……そっかぁ。綾ちゃん、きのう一晩で、がんばってセリフ覚えたんだ。エラかったね」


 有香ちゃんの手がのびてきて、あたしの頭をよしよしなでた。


 あれ……?


「わたしはずっと、綾ちゃんがカワイイってこと、わかってたよ。綾ちゃんは、ちゃんと中条とつりあってるよ。この機会に、もっと押しまくっちゃいな」


「ちょっと、永井さん! なに勝手なこと言っちゃってるのっ!?  永井さんだって、最近は中条君と仲良くしてたじゃない。和泉さんに出し抜かれて、くやしくないの?」



「……あのさ~、リン。白熱してるとこ、悪いんだけど……」


 リンちゃんの後ろで、真央ちゃんがぼそり。


「有香が中条としゃべってんのは、有香が、中条んちの店で、ハンドメイドの小物、売ってもらってるからだぞ」


 ――え?


 リンちゃん、目が点。

 女子たちも目が点。

 あたしだって、目が点。



 わっと、女子たちから歓声があがった。


「すご~い、永井さんっ! 劇の衣装もプロ級だって思ってたけど、やっぱりプロの腕前だったんだ~っ!! 」

「おとな相手に、商売してるなんて、カッコイイー 」


 いっせいにしゃべりだした女子たちにかこまれて、有香ちゃん、たじたじ。


「え? う、うん。でも……そんなすごいものじゃなくてね……」


 えっと……? あれ……?


 あたしだけ、今ひとつ、頭がついていけてないんだけど……。


「……あの、有香ちゃん?」


 あたしは、おそるおそる、有香ちゃんのメガネの中をのぞきこんだ。


「有香ちゃんは、ヨウちゃんとつきあってるんじゃなかったの? だから、ヨウちゃんちに、通ってるんじゃないの……?」


「あ、綾ちゃん!?  なんで、そんな話になっちゃってるのっ!?  中条から、ちゃんときいてたんじゃなかったのっ!? 」


 わっ! 有香ちゃんてば、すごい剣幕。

 あたしの両手をぎゅっとつかんで、黒縁メガネの下から、ぐいぐいのぞき込んでくる。


「……きいてない……」


「ウソっ!?  きいてないのっ!?  あいつ、なに考えてるわけっ!?  ふつう、真っ先に話すでしょっ! 綾ちゃんもだよっ!!  きいてないなら、『きいてない』って言ってよ! わたし、てっきり、綾ちゃんは知ってるって、思い込んでたっ!

どうしよう、それじゃ、わたしずっと、知らないで、綾ちゃんのこと苦しめてたんだよねっ!?  あ。綾ちゃん、まさか、だから最近、誠とばっかり話してたの? わたしとしゃべってくれなかったのは、そのせいっ!? 」


「……う……うん……」


 もしかして、あたし……。

 すっごいアホっ子……?



「……それじゃあ、有香ちゃんは、ヨウちゃんから告白されたわけじゃなかったの……?」


 家庭科室に立ち込めてるのは、外の曇り空みたいに、どんより重たい空気。

 女子たちは、あっちこっちに目を泳がせて、あたしたちに「気をつかってないよ」ってふりをしてくれてる。




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