
え……ええっ!?
「綾。あんま……気にすんな。妖精なんて、気まぐれな生きもんだろ? ただ単に、どっかに出かけてるだけだって」
目の前で、アップになってる、熱を帯びた琥珀色の瞳。
わ……。こんなんされて、恋に落ちない人が、いるわけないよ……。
だけど、あたしはこくんとつばを飲み込んだ。
「……ねぇ、ヨウちゃん。好きな人がいるの?」
「……は?」
ヨウちゃんの手が、あたしの髪からはなれる。
「だって、さっき。『人を好きになると痛い』って言ったじゃん」
「だから、それは一般論……」
「一般論じゃないよっ! あのね、『好きになると痛い』なんて、本気で恋をしてる人にしか言えないセリフだよっ!! 」
琥珀色の瞳をにらみつけたら、ヨウちゃん、たじたじ。
あたしから目をそらして、右を見て。ほっぺたほんのり、赤くなる。
「まぁ。……いるよ。フツウに」
……やっぱり。
ちょっと前までは、そういうのよくわかんないって言ってたくせに。
「だれ?」
自分の口から出た言葉に、すぐに「しっぱいした」って気づいた。
名前なんかきいちゃったら、あたし、本格的な失恋じゃんっ!
「……だ……だれって……」
ヨウちゃんの顔、もう、耳まで真っ赤っ赤。ぼうっとのぼせたみたいな目になって、口を手のひらで、マスクみたいにおおってる。
「そ、そんなの……め……」
つぶやいたとたん、ヨウちゃんの目が、泣きそうにゆがんだ。
「……め?」
きき返したけど、ヨウちゃん、パチパチまばたきをくり返すだけ。
しまいには、顔をそむけちゃって。
「……うるさい。どうだっていいだろ?」
ぼそぼそつぶやいて、話を終わらせちゃった。
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