《1》 好きな人の、好きな人8 - ナイショの妖精さん3
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《1》 好きな人の、好きな人8

  02, 2021 22:50
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 え……ええっ!?


「綾。あんま……気にすんな。妖精なんて、気まぐれな生きもんだろ? ただ単に、どっかに出かけてるだけだって」


 目の前で、アップになってる、熱を帯びた琥珀色の瞳。


 わ……。こんなんされて、恋に落ちない人が、いるわけないよ……。



 だけど、あたしはこくんとつばを飲み込んだ。


「……ねぇ、ヨウちゃん。好きな人がいるの?」


「……は?」


 ヨウちゃんの手が、あたしの髪からはなれる。


「だって、さっき。『人を好きになると痛い』って言ったじゃん」


「だから、それは一般論……」


「一般論じゃないよっ! あのね、『好きになると痛い』なんて、本気で恋をしてる人にしか言えないセリフだよっ!! 」


 琥珀色の瞳をにらみつけたら、ヨウちゃん、たじたじ。

 あたしから目をそらして、右を見て。ほっぺたほんのり、赤くなる。




「まぁ。……いるよ。フツウに」




 ……やっぱり。


 ちょっと前までは、そういうのよくわかんないって言ってたくせに。



「だれ?」



 自分の口から出た言葉に、すぐに「しっぱいした」って気づいた。


 名前なんかきいちゃったら、あたし、本格的な失恋じゃんっ!



「……だ……だれって……」


 ヨウちゃんの顔、もう、耳まで真っ赤っ赤。ぼうっとのぼせたみたいな目になって、口を手のひらで、マスクみたいにおおってる。



「そ、そんなの……め……」



 つぶやいたとたん、ヨウちゃんの目が、泣きそうにゆがんだ。


「……め?」


 きき返したけど、ヨウちゃん、パチパチまばたきをくり返すだけ。

 しまいには、顔をそむけちゃって。




「……うるさい。どうだっていいだろ?」


 ぼそぼそつぶやいて、話を終わらせちゃった。






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