《1》 好きな人の、好きな人5 - ナイショの妖精さん3
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《1》 好きな人の、好きな人5

  30, 2021 21:48
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「……な、なんだ?」


 ヨウちゃんも、後ずさり。


「あっ! 中条君、やっと帰ってきた~っ!」

「って、和泉さんもいる~! サイアク。やっぱり、隠れて、中条君につきまとってたんだよっ!! 」


 カウンターに座ってるのは、ツインテールの女の子と、眉毛がきりっと太い女の子。

 やっぱり、うちのクラスのリンちゃんと青森さんっ!


「ね、ねぇ。ヨウちゃん、どういうこと?」


 ヨウちゃんのウインドブレーカーを後ろからつかんだら、「オレだって知らねぇよ」って、耳打ちされた。


「前に、女子たちに、店やってることがバレたって、言ったろ?」


「そ、そうだったっけ?」


「ちょっと、和泉さんっ!!  なに中条君に、くっついてんのよっ!! 」


 リンちゃんが、イスからおりてくる。ぐいって肩を押されて、あたし、ヨウちゃんから、引きはなされる。


「中条君ちがカフェはじめたこと、ちょっとわたしたちより先に知ったからって、いい気にならないでくれるっ!?  ど~せ、お客さんの立場利用して、しょっちゅう中条君の家に入りびたってたんでしょっ! 中条君もお客さんだから、イヤだけど、つきはなせなかったんだ。かっわいそ~。それって、ストーカーと同じじゃん。もうちょっと、人の気持ち考えて行動したら?」


「……ち、ちがうもん……そんなんじゃないもん……」


 でも、強く言い返せない。


 だって、すでにフラれてるのに、つきまとってるのは、たしかだし……。


「べつに。めいわくはしてねぇけど」


 ぼそっと言われたから、びっくりした。

 ヨウちゃんを見たら、リンちゃんの横の、カウンターのイスにランドセルをかけて、腰をおろしてた。


「かあさん、オレにもコーヒー」


「はいはい。綾ちゃんは、何にする? せっかく、カワイイお客さんがたくさんきてくれたんだから、おばさん、おごっちゃうわよ。さ。座って、座って。みんな仲良くね」


 ヨウちゃんのお母さんが、ぽっくりエクボをつくって、ほほえんでくれた。

 白いレースのエプロンに、ゆるいウエーブのかかったミディアムヘア。

 トゲトゲした店内の空気が、お母さんのかわいらしい笑顔でやわらかくなる。


「あ、あの。じゃあ、あたしはココアをください!」


 リンちゃんたちから隠れるみたいに、あたしもヨウちゃんの向こうのハイチェアによじのぼった。


「中条くぅん、きいてぇ~!」


 ネコがあまえるみたい。リンちゃんの腕が、スルッと動いて、ヨウちゃんの左腕にからみつく。


 イヤ~っ! ヨウちゃんにさわんないで~っ!!


 さけんじゃいたいけど。さけべない。

 だって、そこはさ。あたし、カノジョじゃないもん。ただの、友だち。

 って言うか、ストーカーすれすれ……。


「紀伊美(きいみ)ってば、カレシができたんだよ~っ!!  塾でいっしょになった人なんだって~。話したらもりあがっちゃって。で、紀伊美、その人から告白されて。ねっ!」






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