
きゅっとくちびるをかたく閉じて、あたしうなずいた。
「……う、うんっ!」
ヨウちゃんににぎられてる右手を、すっと横にのばす。
ヨウちゃんの右肩に、あたしの左手をのせて、ふたり、抱きあうみたいに向かい合う。
昔、アニメで見た、王子様とのダンスをマネしたんだけど。
こ、これって……なんかすごく照れくさいかも……。
あたしの背中にまわしたヨウちゃんの右腕も、やたらぎくしゃくしてるし。
足をのばして、する~ってすべるように横に移動。つ~つ~って移動して、右手を上にあげてその手を軸に、体をくるくる。
体がのってきたら、スピードもどんどんあがってきた。
サッとヨウちゃんの手をはなして、ひとりでくるくる回って。また、枝にとまるチョウチョみたいに、パッとヨウちゃんの手をつかんだりして。
あたしがあんまり、あっちこっちに動くから。ヨウちゃんのほうが遅れモード。
「なんかすげぇぞ、あのふたり」
男子たちの声がきこえてきた。
「あの葉児が、和泉に押されてる!」
だってぇ。踊りたいように踊れって、ヨウちゃんがぁ~っ!!
飛んだり、はねたり。回ったり。つま先立ちで立ちどまったり。
こめかみに汗をうかべていたヨウちゃんが、あたしの動きに合いだした。
パっと、ふたりいっしょに手をにぎりあって。サッとふたりして、はなれたりして。
で、また右手をとりあって、あたし、片足つま先立ちで、くるくるくる~。
「あははは、楽し~っ!! 」
ケラケラ笑ったら、ヨウちゃんもケラケラ笑ってた。
あれ……? ヨウちゃんて、こんな顔して笑うんだ……。
鼻の上にしわをつくって。目の中から光の粒、キラキラこぼれて。ほっぺた、小さい子みたいにモミジ色。
「……なんだよ。ふたりともすげ~対等じゃん」
キャンプファイヤーの炎を背に、誠がズボンの両ポケットに手をつっこんだ。
そっか。
そうなんだよ、誠。
あたしたち、対等なんだ。
ヨウちゃんにもあたしにも、まちがえることはあって。
ヨウちゃんがあたしを正したり。
あたしがヨウちゃんを正したり。
ふたりともいっしょに失敗しちゃったときは。
あわててもどって、また手を取りあえばいいんだね。
あと二回寝たら、十一月。
そしたら、ママの言うとおり、あたしは塾に行く。
妖精になれることをわすれるくらい、人間として生きていく。
だけど、妖精としてのあたしものこしておくよ。
ヨウちゃんに何かあったとき、あたしの羽で守れるように。
――「ナイショの妖精さん 2」 完――
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