《5》 決戦は卒業キャンプで 15 - ナイショの妖精さん2
fc2ブログ

《5》 決戦は卒業キャンプで 15

  28, 2019 15:50
2019032703


 きゅっとくちびるをかたく閉じて、あたしうなずいた。


「……う、うんっ!」



 ヨウちゃんににぎられてる右手を、すっと横にのばす。

 ヨウちゃんの右肩に、あたしの左手をのせて、ふたり、抱きあうみたいに向かい合う。

 昔、アニメで見た、王子様とのダンスをマネしたんだけど。


 こ、これって……なんかすごく照れくさいかも……。


 あたしの背中にまわしたヨウちゃんの右腕も、やたらぎくしゃくしてるし。

 足をのばして、する~ってすべるように横に移動。つ~つ~って移動して、右手を上にあげてその手を軸に、体をくるくる。

 体がのってきたら、スピードもどんどんあがってきた。

 サッとヨウちゃんの手をはなして、ひとりでくるくる回って。また、枝にとまるチョウチョみたいに、パッとヨウちゃんの手をつかんだりして。

 あたしがあんまり、あっちこっちに動くから。ヨウちゃんのほうが遅れモード。



「なんかすげぇぞ、あのふたり」


 男子たちの声がきこえてきた。


「あの葉児が、和泉に押されてる!」


 だってぇ。踊りたいように踊れって、ヨウちゃんがぁ~っ!!


 飛んだり、はねたり。回ったり。つま先立ちで立ちどまったり。

 こめかみに汗をうかべていたヨウちゃんが、あたしの動きに合いだした。

 パっと、ふたりいっしょに手をにぎりあって。サッとふたりして、はなれたりして。

 で、また右手をとりあって、あたし、片足つま先立ちで、くるくるくる~。


「あははは、楽し~っ!! 」


 ケラケラ笑ったら、ヨウちゃんもケラケラ笑ってた。


 あれ……? ヨウちゃんて、こんな顔して笑うんだ……。


 鼻の上にしわをつくって。目の中から光の粒、キラキラこぼれて。ほっぺた、小さい子みたいにモミジ色。


「……なんだよ。ふたりともすげ~対等じゃん」


 キャンプファイヤーの炎を背に、誠がズボンの両ポケットに手をつっこんだ。



 そっか。

 そうなんだよ、誠。

 あたしたち、対等なんだ。


 ヨウちゃんにもあたしにも、まちがえることはあって。

 ヨウちゃんがあたしを正したり。

 あたしがヨウちゃんを正したり。


 ふたりともいっしょに失敗しちゃったときは。

 あわててもどって、また手を取りあえばいいんだね。




 あと二回寝たら、十一月。

 そしたら、ママの言うとおり、あたしは塾に行く。

 妖精になれることをわすれるくらい、人間として生きていく。



 だけど、妖精としてのあたしものこしておくよ。



 ヨウちゃんに何かあったとき、あたしの羽で守れるように。
















――「ナイショの妖精さん 2」 完――


前のページへ戻る


にほんブログ村


児童文学ランキング



スポンサーサイト



Comment 0

What's new?