《5》 決戦は卒業キャンプで 4 - ナイショの妖精さん2
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《5》 決戦は卒業キャンプで 4

  10, 2019 21:07
2019032703


「こらこら! 話を中断させんな。ここからが怖いとこなんだから! あとで、おまえらには、この霊が出たって場所を、じっさいに歩いてもらうからな~。よーくきいとけよ~」


 大河原先生、自分のあごの下から懐中電灯をあてて、ニヤ~。


 ……ヨウちゃん、だいじょうぶかな?


 あたしはもう一度、チラッと、後ろをふり返った。

 右、リンちゃん。左、青森さんで。「中条君、こわいよ~」とかあまえられて、腕を組まれちゃってる。


 でも……。一番、怖がってんの、ヨウちゃんだよ……。


 あたしがあげたサシェは、妖精に関わること以外には効かないもん。

 ポーカーフェイスでがんばってるのが、ぎゃくに痛々しい。



 先生の話は、長々続いて。

 開放されたのは、三十分後。


「じゃあ、これからきもだめしをはじめるぞ~」


 手をメガホンみたいに口にあてて、大河原先生がさけんだ。


「男女ひとりずつペアになって。ひと組行ったら、十分後に、次の組が出発する。ルートは、もう覚えたな? 目的地の外人墓地の木の下で、恩田先生が待ってるから。恩田先生から証拠のスタンプをもらって、もどってくること。

ペアはくじ引きで決める。くじに書かれてる数字が出発の順番だ。男女別にくじの箱があるから、引きに来い~」

「え~、くじぃ?」

「わたし、中条君と組みたい~。だれか、中条君と当たった人いたら、交換して~」

「倉橋、ズルは禁止!」


 いつものクラス並みにさわがしくなったホールの中で。あたしも真央ちゃんの後ろにならんで、女子の箱からくじを引いた。

 四つにたたまれた紙を開けたら。


「あ、1」


「和泉ぃ、1番? あ~、オレ4番だ~。ショック~」


 誠がさけんだとたん。向こうから、リンちゃんの「え~、わたし、誠とぉ~っ!? 」って声。


「1だ。和泉と、か」


 顔をあげたら、大岩が自分のくじを手に、あたしを見おろしてた。

 その手のくじが、マジックみたいにスッと消える。


 ……へ?


 大岩も面食らったみたい。自分の手のひらをまじまじ。

 大岩のとなりを見たら、ヨウちゃんが立っていた。冷めた目で、指の間に、1番のくじをはさんでる。


 え? あ~っ!!


 ぽんっと、大岩の手のひらに、「7」のくじが乗っかった。


「へ? えっ! あっ!!  葉児、ズルっ!? 」


2019041002

「綾、行くぞっ!」


 気づいたら、あたしの右手は、ヨウちゃんの左手に引っぱられてた。



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