
「こらこら! 話を中断させんな。ここからが怖いとこなんだから! あとで、おまえらには、この霊が出たって場所を、じっさいに歩いてもらうからな~。よーくきいとけよ~」
大河原先生、自分のあごの下から懐中電灯をあてて、ニヤ~。
……ヨウちゃん、だいじょうぶかな?
あたしはもう一度、チラッと、後ろをふり返った。
右、リンちゃん。左、青森さんで。「中条君、こわいよ~」とかあまえられて、腕を組まれちゃってる。
でも……。一番、怖がってんの、ヨウちゃんだよ……。
あたしがあげたサシェは、妖精に関わること以外には効かないもん。
ポーカーフェイスでがんばってるのが、ぎゃくに痛々しい。
先生の話は、長々続いて。
開放されたのは、三十分後。
「じゃあ、これからきもだめしをはじめるぞ~」
手をメガホンみたいに口にあてて、大河原先生がさけんだ。
「男女ひとりずつペアになって。ひと組行ったら、十分後に、次の組が出発する。ルートは、もう覚えたな? 目的地の外人墓地の木の下で、恩田先生が待ってるから。恩田先生から証拠のスタンプをもらって、もどってくること。
ペアはくじ引きで決める。くじに書かれてる数字が出発の順番だ。男女別にくじの箱があるから、引きに来い~」
「え~、くじぃ?」
「わたし、中条君と組みたい~。だれか、中条君と当たった人いたら、交換して~」
「倉橋、ズルは禁止!」
いつものクラス並みにさわがしくなったホールの中で。あたしも真央ちゃんの後ろにならんで、女子の箱からくじを引いた。
四つにたたまれた紙を開けたら。
「あ、1」
「和泉ぃ、1番? あ~、オレ4番だ~。ショック~」
誠がさけんだとたん。向こうから、リンちゃんの「え~、わたし、誠とぉ~っ!? 」って声。
「1だ。和泉と、か」
顔をあげたら、大岩が自分のくじを手に、あたしを見おろしてた。
その手のくじが、マジックみたいにスッと消える。
……へ?
大岩も面食らったみたい。自分の手のひらをまじまじ。
大岩のとなりを見たら、ヨウちゃんが立っていた。冷めた目で、指の間に、1番のくじをはさんでる。
え? あ~っ!!
ぽんっと、大岩の手のひらに、「7」のくじが乗っかった。
「へ? えっ! あっ!! 葉児、ズルっ!? 」

「綾、行くぞっ!」
気づいたら、あたしの右手は、ヨウちゃんの左手に引っぱられてた。
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