《4》 告白の後先 12 - ナイショの妖精さん2
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《4》 告白の後先 12

  21, 2019 21:19
20190209



「知らないに決まってんだろっ!!  教えないようにしてたんだからっ!  おまえ、アホっ子だから、万能薬だなんて知ったら、いい気になって、りんぷんをつかいまくるに決まってんだっ! で、気づいたら手遅れじゃ、すまないんだよっ!!

オレは、べつに、おまえを黒いタマゴのところに連れてったって、おまえのりんぷんを、たよるつもりはない。けど、わかんないじゃねぇかっ!!  いざとなったときに、自分がどういう行動に出るかなんてっ!!  もし、オレが、自分のことを優先させて、綾を犠牲にでもしたらどうすんだよっ!! 」


「……よ、ヨウちゃん……」


 ハアハア肩で息をつきながら、ヨウちゃんの体から力が抜けていく。

 ぽうっと、体を包み込む虹色の光。


 これが、ヨウちゃんが、必死で隠してたこと――。



「綾……オレ、怖いんだ……」


 背中を丸めて、ヨウちゃんは、頭を、こてんとあたしの左肩に倒した。


「オレ……今も、あの目に見られてる気がする。あの目は……オレのことを、とうさんだって、思ってる。自分が殺したはずのとうさんが、まだ生きてたんだって、息巻いてる。いつでも殻からとびだして、襲ってやるって身がまえてる……」


「ヨウちゃん……」


 やっぱり、ヨウちゃんは知ってたんだ……。

 お父さんが亡くなった理由……。



2019031601




 あたしは、ヨウちゃんの平たい背中に手をまわして、後ろ頭にふれてみた。

 くしゃっとやわらかい、琥珀色の細い髪。


「怖いよね……キツイよね……」


 小さい子でも平気なオバケ屋敷でさえ、怖いのにね。



 ガサっと、ヨウちゃんの左手から、紙袋が落ちた。自由になった両腕が、あたしの腰にぎゅうっと抱きついてくる。

 そでがあがって、パーカのわきのしたの生地が引っぱられる。

 ポケットから、虹色の花がこぼれ落ちた。


「……あっ!」


 声を出して、「しっぱいした!」って、気づいたときは遅かった。


 ヨウちゃんはもう、自分の足元を見おろしていた。

 琥珀色の目が、時がとまったように、ヘアベルを見ている。


「……ヨウ……ちゃん」


 ヘアベルは、地面に熱を吸いとられるかのように、虹色の光をなくしていく。




「――ふ~ん。そういうこと」


 長い右腕が動いて、ヘアベルを拾いあげた。


「綾。おまえ、人を自白させたのか。……いい趣味だな」


 うつむいた前髪の下で、ヨウちゃん、片口だけあげて笑ってる。


「じ、じはく……?」

「口を割らせるって意味だよ。どうせ、かあさんもグルなんだろ?」


 ほおが、石膏みたいに硬い。




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