《4》 告白の後先 11 - ナイショの妖精さん2
fc2ブログ

《4》 告白の後先 11

  19, 2019 19:51
20190209



 小路にしきつめられた小石を、スニーカーの底が踏みしめる音が近づいてくる。

 しゃがみこんだまんまで、そ~っと、目だけ上にあげる。

 
 琥珀色の髪が、日差しに照らされていた。

 左手に紙袋をさげて、右手をジーンズのポケットにつっこんで。ヨウちゃんが冷めた目で、あたしを見おろしてる。


「おまえ、なにしてんだよ、人んちで」


「……えっと……」


 どうしよう。言い訳できない……。


「綾ちゃんを呼んだのは、わたしよ」


 玄関のほうを見たら、半分開いたドアに寄りかかって、お母さんが腰に手を置いていた。


「ヨウちゃんが、ぜんぜん、綾ちゃんをうちに呼んでくれないから。たまにはお茶にいらっしゃいって、誘ったの。ね、綾ちゃん!」


「かあさん、余計なこと……」


 ヨウちゃんのスニーカーが、お母さんのほうを向く。


 ……今っ!


 あたしはサッと手をのばした。

 虹色にかがやくヘアベルを一輪、ヨウちゃんのパーカのポケットに、後ろからつっこむ。

 ポケット越しに虹色の光が点滅してる。

 ドキドキ、ドキドキ。

 鼓動で、胸がはり裂けそう。


 これって、しちゃいけないことだよね?

 人が隠してることを、強引にききだそうとするなんてっ!!


 妖精に対するときだけにつかえる、フェアリー・ドクターの魔力。

 あたしは半分妖精。


 だから……あたしには、この花の魔力をつかうことができる――。


「ヨウちゃん。ききたいことがあるの」


 琥珀色の目をにらみつけて、あたしは立ちあがった。


「ヨウちゃんは、ひとりで黒いタマゴを壊しに行くつもりなの?」


 ヨウちゃんののどが鳴った。

 眉がひそまる。琥珀色の目が、震えだす。


「書斎に、薬のビンがならんでた。あれって、戦闘準備だよねっ?」


 パーカのポケットが虹色に光った。ヨウちゃんの体全体を虹色に包みこむ。



「――そうだ」


 ほおを引きつらせながら、ヨウちゃんが口を動かした。


「なんで、ひとりで行くのっ!?  あたしも行くっ! ヨウちゃんといっしょに、黒いタマゴを壊しに行くっ!! 」



「それは……ダメだ」


「どうしてっ!? 」


 あたしはぎゅっと、両手で、ヨウちゃんのパーカの胸をつかんだ。

 ヨウちゃんが奥歯をかみしめる。

 抵抗してるんだ。ヘアベルの魔力に。



「……もし、なにかあったとき……オレが……おまえをたよろうとするから……」


 ヨウちゃんのこめかみを、汗が伝った。


「妖精のりんぷんは……万能薬だ。妖精のりんぷんは……人が妖精から受けたすべての傷を癒す」


 ……え?


 あたしの持っている銀色の羽。その羽を形づくってる銀色の光の粒。


 あのりんぷんに……そんな力があるの……?


「誠が治ったのも……りんぷんの力だ……。だけど、ダメだ。これ以上、りんぷんをつかうな! りんぷんをつかいきると、妖精は消滅するっ!! 」


――消滅……っ!?



「……ウ……ソ……。そんなのあたし……知らない……」




次のページに進む

前のページへ戻る



にほんブログ村


児童文学ランキング
スポンサーサイト



Comment 0

What's new?