《4》 告白の後先 7 - ナイショの妖精さん2
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《4》 告白の後先 7

  09, 2019 20:13
20190209



「……あ~。オレとつきあおってこと? それ、い~よ。すぐに決めなくて。だって、オレ、和泉が葉児のこと好きだって、知ってるもん」


「……え?」


 ドキッと胸が鳴る。

 アホ毛をゆらして顔をあげたら、誠は「へへ」って鼻の頭をかいた。


「だからさ~。とりあえず、保留ってことで~。葉児を好きなままでいいからさ~」


「……いいの、誠? あたしがヨウちゃんのことを好きでも……?」


「うわ~っ! オレ、とうとう和泉の口から、ソレきいちゃった~っ!! 」


 誠、急に頭を抱えて、砂浜の上にしゃがみ込む。


「やっぱ、へこむ~。でも、どうっしょもないんだよなぁ~」


 誠って、素直。

 ホンット素直。

 あたしも見習わなきゃ。


「ありがとう、誠。あたしのことを好きになってくれて。あたしも誠といると楽しいよ。でも、あたし……誠の気持ちには応えられない……」


 ショートパンツをはいた足で。あたしも誠の横で、砂の中にひざをついた。


「ヨウちゃんはさ。怒ることもいっぱいあるし、エラそうなんだけど。意外とビビリで、怖がりなんだ。

それなのにさ。今、あたしからもみんなからも、なにかを隠して、ひとりで、よくわかんない、すっごい怖いことに、たえようとしちゃってる。そんなのちょっと、危なっかしいじゃん。見てらんないよ。

あたしはアホっ子だけど、なにか助けられることはないかって、これからさがしてみようと思ってる」


 潮風が吹いて、あたしの髪の毛を背中に流した。


 そう……。


 これが、あたしのやりたいこと……。



「……和泉」


 立ちあがったあたしを、誠が見あげた。


「葉児のことで和泉がきつくなったら、葉児なんか投げ出してでも、逃げちゃえよ」

「え~? なにそれ。ひど~い!」


 だって、ヒーローものの映画だったら、そこはぜったい、自分の身をていしてでも、相手を守んなきゃならないとこでしょ?


「ひどくないって。オレは葉児より、和泉のほうが大事だもん。あとさ。『好き』とか『つきあう』とか、そういうのはナシでさ。これからもオレと遊んでよ。だって、単純に。オレ、和泉といるとたのし~からさ~」


「なはは」って笑って、誠も立ちあがった。


「な、約束。友だち同士っ!」


 あたしの右手をぎゅっとにぎった、しめっぽい誠の手のひら。赤い指先。



2019030901





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