《4》 告白の後先 4 - ナイショの妖精さん2
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《4》 告白の後先 4

  22, 2019 21:31
20190209



 ハッとして、ほおをぬぐう。


 あたし……言っちゃった……?

 覚悟なんて、まだぜんぜんできてないのに……。



「……おまえにだけは、言われたくなかったよ」


 ズンと、心臓に矢が刺さった。


「……なんで? なんで、そんなこと言うのっ!?  あたしが、お荷物だから? あたしは勝手に妖精になったりして、いっつもヨウちゃんに迷惑をかけてばっかりだから? だから、好きになられたらやっかいなのっ!? 」


「……自分でよく、わかってんじゃねぇか」


 ザラザラの声。


「お荷物に決まってんだろ? アホっ子で、ひとりじゃなんもできなくて。いつもオレに尻ぬぐいばっかさせて。そんなヤツを、どうしてオレが、好きになるんだよ?」


「……ひどい……」


 キツくて、きびしいヨウちゃん。

 だけど、きびしいヨウちゃんの下には、やさしいヨウちゃんがいる気がしていた。

 やさしいヨウちゃんが、あたしに笑ってくれるから、あたしはきびしいことを言われても、傷つかないでいられた。


「ヨウちゃんやっぱり、上からだ。あたしのことを見くだしてるんだ。誠はちゃんと、あたしを、対等に見てくれてるもん。好きだって言ってくれたもんっ!」


「……え?」


 琥珀色の目が横にぶれる。


「……いつ?」


「日曜。ふたりで買い物行ったとき」


 ヨウちゃんはうつむいて、歯をかみしめた。


「なら……オレなんかに告白してる場合じゃねぇだろ? 誠とつきあえよ」


「な、なんでよっ!?  なんでそんなこと、ヨウちゃんに言われなきゃなんないのよっ!? 」


「誠は……いいヤツだぞ」


「そんなこと、知ってるよっ!」


 あたしはパッとかけだした。

 ヨウちゃんの横をすり抜けて、屋上のドアを抜けて。

 階段を三階へかけくだった。





* * *







 底抜けに明るい音楽が、校庭に流れてる。

 五時間目になったら、どんどん外は寒くなってきて。
 みんな、ジャージにくるまって、外に出るのを嫌がってたくらいなのに。

 音楽だけをきいていると、ぽかぽか、春の昼下がりみたい。

 曲名は「オクラホマ・ミキサー」。

 卒業キャンプのときに、キャンプファイヤーで踊るフォークダンスなんだって。

 今はその練習中。

 クラスメイトが全員、輪になって。男女ペアで、女子が前で、男子が後ろ。ふたりで手を取りあって、軽いステップ踏んで踊っていく。

 くるっとまわって、おじぎをしたら、女子は後ろの男子と入れかわり。

 明るいリズムの中で、どんどんペアがかわってく。

 最初は寒いからイヤがっていた女子たちも、「中条君と踊れる~」って、もりあがりだした。

 順にひとりずつ男子がまわってくるんだもんね。だれでも、クラスの男子全員と踊れるんだ。


「イテっ! 和泉、足踏むなっ!」


 窪が右足をおさえて、とびあがった。


「え? あ……ごめんね……」


 くるって回ろうとしたら、なんでか手首がねじれてる。


「イタタタタ。手、はなせっ! 手っ!」


 あ……また、まちがえた……?


 相手がかわっていくたびに、あたしとペアになった男子は、「ぎゃ~」とか「イテぇ」とか悲鳴をあげる。


「さ……さすが。和泉。究極の運動オンチ……」

「ヤバイ、オレ次、和泉だ。どうしよう、病院行きにされたら……」


 男子たちの声、丸きこえなんだけど。


 でも、「右、左、右、左」って言うけどさ。右足ってどっちだっけ……?


 くるっと回っておじぎしたら、ゴチっと大岩の頭にあたしの頭がぶつかった。


「ぎゃ~っ! い、和泉の頭突きくらった~っ!! 」


「ご、ごめん……」


 次の男子をぼ~っと見あげたら、大岩の後ろで、ヨウちゃんがあたしを見おろしてた。


 ビクッと心臓が痙攣する。


 ……次、ヨウちゃんと踊るの……?




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