
……ヨウちゃんに告白……?
あたしが……?
ムリムリ、ぜったいありえない~っ !!
給食を食べ終わった昼休み。
きょうはなんだか女子たちがせわしない。
リンちゃんたちに背中を押されて、ヨウちゃんまで屋上に連れて行かれちゃって。
けっきょく、教室のまん中の列の、一番後ろの席はからっぽ。
いつもどおりに、真央ちゃんの席を有香ちゃんとかこんで。あたしたちは、まったりおしゃべりタイム。
ほら、ママ。わかる? やっぱりムリなんだよ!
学校じゃ、リンちゃんたちのバリケードがかたいし。
ヨウちゃんの家にも行けないんじゃ、あたしなんて、告白はおろか、ヨウちゃんと一言、口をきくのだって、むずかしいんだから。
「みんな、きいて~っ!! 屋上で青森さんが、中条君に告白したって~っ!」
廊下を女子たちがドタドタと走ってきて、あたしの肩、ビックーってとびはねた。
えっ? こ、こ、こくはくっ!?
青森さんは、リンちゃんといつもいっしょにいる女の子。眉毛がきりっと太くて、それがよく見えるように、前髪をあげてピンでとめている。
ヨウちゃんのことで、リンちゃんとキャアキャア言っているのは、知ってたけど。
教室をキョロキョロしたら、教室にのこされた女子たちがはしゃいでた。
「え~っ!? ウソ~、ホント~っ !?」
「ね~。それで、返事は~っ!? 」
「なんだか、スゴイさわぎだね」
このクラスで、うるさそうに眉をひそめてる女子は、有香ちゃんと真央ちゃんくらいのもの。
あたしたちグループをのぞいた六年の女子はみんな、ヨウちゃんのファンなんだもん。
だけど、本気でヨウちゃんのことを好きなのは、リンちゃんのグループの子たちだけかもしれない。
ほかの子たちは、アイドルみたいにヨウちゃんの話題で、もりあがりたいだけ。
「きいて、きいて~っ!」
女子たちの第二陣がまた、廊下を走ってきた。
「今度はリンが、中条君に、二度目の告白したって~」
「うわぁ~っ!? リンってば、ガッツある~っ!! 」
「それで、中条君、どっちを取るの~っ!? 」
「すっげ」って男子たちが引くくらい、女子たち勝手に大もりあがり。
心臓が冷たくなって、ドクドク、ドクドク早打ちしてる。
「……なんで、急にこんなこと?」
だけど、真央ちゃんはそっけない。
「ど~せ、アレだろ? 中条が最近、なにかとひとりになりたがるから。あいつらもあせってんだよ」
「もうすぐ、卒業キャンプだしね。その前に、カップルになっときたいってのも、あるんじゃない?」
有香ちゃんも「やさしい布小物」の本から顔をあげない。
……なにその理由……。
「綾も、あれだぞ。気になるなら参戦してくればい~んだぞ。中条を取られたくないんだろ?」
うっ! ドキっ!
そうだった。あたしがヨウちゃんを好きなこと、ふたりにはバレてたんだ。
「……参戦なんて、しないよ……」
あたし、ぎゅっと自分のショートパンツのすそをにぎりしめた。
「だって、そんな……気を引きたいからとか、卒業キャンプをカップルですごしたいからなんて理由で、告白するなんて。自分勝手すぎるよ……」
きょうもヨウちゃん、調子悪そうだった。授業中までつくえの上につっぷしていたから、さすがに先生に怒られてた。
怒られてもヨウちゃん、ダルそうで。
目の下のクマも、だんだん濃くなってきてるみたい。
「体調悪い人の気持ち、ぜんぜん考えないで、一方的に自分の気持ちを押しつけるなんて、サイテーじゃんっ!! 」
「ふ~ん。まぁ、正論だけどな……」
ぼんやりした真央ちゃんの声をききながら、あたしは自分の言葉が、ブーメランみたいに、はね返ってくるのを感じてた。
やろうとしてたこと、あたしだっておんなじじゃんっ!
ママにせっつかれたから、告白って。そんなんじゃ、リンちゃんや青森さんとかわんないっ!
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