《3》 デートスポットには、オシャレして 9 - ナイショの妖精さん2
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《3》 デートスポットには、オシャレして 9

  03, 2019 22:15
2019011701


 それから、がっちり三十分かけて。誠はう~ん、う~んって、なやんで。

 お母さんに、ヘアピンをひとつ選びあげた。

 ネックレスや指輪より、倉庫仕事にもつけて行けそうなピンがいいんだって。

 プレゼント用に包装してもらっている誠をレジにのこして、あたしは先に店から出た。

 店の壁に寄りかかって、ショッピングモールの通路を見ていたら、このあたりって、カップルばっかり。

 腕を組んで歩くふたりは、ニコニコ笑って幸せそう。


「つきあう」って……どんなだろ……。


 やっぱり、ふつうに会話したり、遊ぶのとはちがうのかな?


 そういえばあたし、ヨウちゃんと、浅山以外に行ったことない。

 会うのはいつも、お父さんの書斎か、浅山でだし。話すのだって、妖精のこと。


「……ヨウちゃんも、カノジョができたら、いつもよりがんばった服着て、こういうところに来るのかな……?」


 ふたりでひとつのジェラート食べてさ。べたべた肩とか抱いちゃったりして。

 ハァって、ため息をついたら、あたしのミュールの横に、誠のスニーカーがならんでいた。


「えっ!?  あ、あれ? 誠、もう、包装してもらったの?」


 ヤダっ! あたし今、声出してたっ!



「……なぁ、和泉。オレにしない?」


「……え?」


 誠の声、小さい。お店の前の壁で。あたしとならんで。オーバーオールのポケットに両手をつっこんで、うつむいてる。


「だってオレ、和泉といると楽しいもん。和泉だって、いつも怒ってばっかのヤツといるより、オレと笑ってたほうが、ゼッタイいいって」


 ……誠……?


「……それって、ラブ?」


 誠の横顔を下からのぞきこんだら、誠のほおが、リンゴみたいに赤く染まった。


「……うん」


 きゅっと目を閉じて、口元へにゃ。


 う……。誠……カワイイ……。




     ●


 生まれてはじめて、男子から告白された。

 ミニスカートから、部屋着のスウェットに着がえて。

 あたし、ダイニングのイスで、ぼぉ~。


「綾、あんたきょう、西湾のショッピングモールに行ってきたんでしょ? いいもの、買えた?」


 キッチンで夕飯のお皿を洗いながら、ママがたずねてきた。


「うん~。なんにも~……」


「あら、めずらしいじゃない。いつもは、ピンとか髪ゴムとか、なにかと買って来るのに」


「……うん~」


 両腕を前に投げだして、あごをテーブルに乗せていたら、お皿を洗うママの姿が、お手伝いをする誠の姿と重なった。


「……ママ。のこりのお皿、あたしが洗おっか?」


 うんしょとイスから立ちあがると、ママの目、キラキラキラ。


「え? あらホントっ!?  じゃあ、お願い」


 ママからスポンジを借りて、チュッと洗剤をつけて。あたし、お皿をごしごし。

 冷蔵庫に用があるとき以外で、キッチンに立つのって、久しぶりかも。


「ねぇ~。ママさ~。あたしぐらいのときから、モテたんでしょ~? 男子から告白されたとき、なんて返事してたの~?」


 お茶碗をこすりながら、たずねたら、ママが「えっ?」っと声をあげた。


 だってさ。

 誠ってば、「返事はすぐじゃなくていい」って言うんだもん。


 あたし、どうしたらいいんだろ……?


「ウソ、綾。もしかして告白されたのっ!? 」


 セットしてたコーヒーメーカーもそっちのけで、ママがあたしに身をのりだしてくる。


「う……うん……」



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