
だけど、誠のクリクリ目を見ていたら、なんだかあたしも笑えてきた。
帽子屋さんから出たら、誠、今度はメガネ屋さんに入っていく。
顔が隠れちゃいそうなくらい、大きな真っ黒サングラスを、試着。
「あははは~。誠、売れないお笑い芸人~」
「え~? オレ的には、マフィアのボスだったのに~」
「ムリムリ、ムリ~っ!! 」
ゲラゲラ笑いながら雑貨屋さんのほうを見たら、あたしも気になるものを発見!
「誠、あのかけ時計見てっ! 数字のかわりに、お寿司がついてるっ!」
向かって店内に入ったら、誠も「うお~、うまそ~ 」ってついてくる。
あはは。なんか、自由!
あっちのお店をのぞいて。こっちのお店をのぞいて。ケラケラ笑って。
さすがに笑いすぎで、わき腹が痛くなってきたころ。
下着屋さんのマネキンの奥に、アクセサリー屋さんが見えてきた。
キラキラ、小さなアクセサリーが、たなや壁をうめていて、それを中学生や高校生のおねえさんたちが、おしゃべりしながらながめてる。
「……オレ、こんな女子の店に入るの、はじめてだぁ~」
あたしの後ろで、誠が腰を引かせた。
「ここは、そんな高いお店じゃなくてね。あたしたちのおこづかいで買えるようなものばっかり置いてあるんだ。ヘアピンとか、カチューシャでもカワイイのが多いから、あたし、よくここに来るんだよ~。
ほら、この指輪とかも。ラピスラズリがついてて、こ~んなカワイイのに、なんとお値段、五百円。これならさ~、プレゼントでもらってもうれしいよ~」
せともののお皿にたくさん入っていた指輪をひとつ、つまんで誠に見せたら、青紫色の石がキラッと光った。
ホントに……。
こんな指輪、ヨウちゃんからわたされたら……あたし、どうなっちゃうんだろ……。
誠のつめの丸い指先が、ひょいっと、あたしの手から指輪をうばった。
「ほぇ?」
顔をあげる前に、指輪はすっと、あたしの右手の中指にはまる。
……え?
「……和泉もほしいの?」
顔をあげたら、黒目がちのクリクリ目が、じっとあたしの顔をのぞきこんでいた。
ほ、ほわぁああっ!!
「なぁ。ほしいなら、和泉のぶんも、買ってあげよっか?」
「い、い、いらない、いらない、いらない~っ!」
あたし、あわてて右手の中指から指輪を抜いて、チャリンとお皿にもどした。
「誠のバカっ! あたしに買うお金があるなら、お母さんのプレゼント代に上乗せしてあげてよっ!」
あ~もうっ !! なんでこう、ほっぺた熱いわけっ!?
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