《3》 デートスポットには、オシャレして 7 - ナイショの妖精さん2
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《3》 デートスポットには、オシャレして 7

  29, 2019 19:29
2019011701



 あたし、なんにも言えなかった……。


 なんでもかんでも、「自分たちががんばれば、なんとかなる」なんて、ただのキレイごと。

 ヨウちゃんのお父さんを、死に追いやったかもしれないタマゴ。

 そんなタマゴに関われば、自分たちの身だってあぶなくなる。


 もういっそ、見なかったことにして、忘れちゃえばいいのかな……?




「……和泉?」


 顔をあげると、誠が首をかしげて、あたしの顔をのぞきこんでいた。


「へ~き? ず~っとだまっちゃってたけど、お腹でも痛いの~?」


「え? え~っ? ちがうよ~!!」


 のこりの肉まんにかぶりついたら、いつのまにか冷えきってた。


「ごめん、ごめん。誠がおかしなこと言うから、ヨウちゃんが怒ったときのことを思い出しちゃって」

「ふ~ん。やっぱ葉児って、怒るんだ~」

「あ。ち、ちがうよ? べつに、誠とあたしがふたりでいるから、怒るわけじゃなくてね。ほら、あたしって、アホっ子だからさ~。うっかり、アホなこと言っちゃって~」

「え~? 和泉がちょっとうっかりしただけで、葉児って、怒るの? それって、おかしくない? ふつうは、お互い、対等じゃん?」


 ハムスターみたいに、肉まんをほっぺたに、いっぱいつめこんで。誠が眉をひそめた。


「同じ歳なのに、上下関係ができてるみたいで、オレ、そ~ゆ~のヤダな~」


 上下関係かぁ……。

 そうかなぁ? よくわかんないけど。





 エスカレーターで二階にあがったら、迷路みたいにあちこち曲がった通路の左右に、お店がずらっとならんでた。

 雑貨屋さんにメガネ屋さん。コーヒー屋さんに、キッズ向けの服屋さん。

 人も多くって、ベビーカーを押したお母さんに、バタバタ走りまわる幼児。腕を組んで歩く、カップル。いろんな世代のいろんな人が歩いてる。

 右側に帽子屋さんが見えてくると、誠が走りだした。


「あ~、和泉、見て見て~っ!!  あれ、おもしれ~」


 たしかに、店頭にかざられてる帽子が、ヘン。シルクハットなんだけど、ケーキみたいな円柱の部分が、すご~くなが~い。しかも、ピンクの豹柄。

 誠、まよいなくその帽子の前にとんでいって、自分の帽子をとると、スパッとシルクハットをかぶった。


「ヤダ、誠ってば、インチキ手品師みたい~っ!! 」


 お腹を抱えて、笑っちゃった。

 となりにかざってあった、豹柄のつえまでくるくるまわして、誠ってばノリっノリ。

 店内を見まわしたら、ニット帽や、ボアでほこほこのエスキモー帽や、オシャレでカワイイ帽子がいっぱいだった。誠がかぶってるヤツは、お客さんの目を引くために置かれてるのかな。


「和泉ぃ~。これ、かぶってぇ~」


 次に誠が見つけてきたのは、三角コーンみたいにとんがった、革の帽子。


「え~っ!?  これって、魔女の帽子~?」


 ファンタジー映画から抜け出てきたみたい。


 頭にかぶって、鏡をのぞいてみたら。あたしの頭、小さすぎ。大きな帽子に目までうもれそう。


「わははは、和泉が魔女っ子だ~っ!!  チョ~似合ってる~!!」

「ええっ!?  似合ってないもん、ぶかぶかだし~」


 誠の声がおっきいから、まわりのお客さんがあたしをふり返って、くすくす笑う。


 は、はずかし~。


20190129




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