《3》 デートスポットには、オシャレして 6 - ナイショの妖精さん2
fc2ブログ

《3》 デートスポットには、オシャレして 6

  27, 2019 18:08
2019011701



――どんなかは、書いてなかったから、わからねぇな。

あと、とうさんの日記を読んだら、八年前。綾に白いタマゴをわたした一週間後に、もうひとつ、タマゴが産まれる可能性があったらしい――


――可能性?――


――そ、可能性だけ。タマゴが産まれる予定だった日が、とうさんの命日――


――それって、つまり……――


 あたしは、ぞくっとして、両腕でバスケットボールを抱きしめた。


 ……あたしの夢とつながりそう……。


 もしも、タマゴがちゃんと予定日に産まれていて。それがヒメの感情で、黒いタマゴになっちゃったとしたら……。


 ヨウちゃんのお父さんは、そのせいで……?


 でも……言えない……。


 だって、こんな元気のないヨウちゃんに、お父さんが亡くなった理由は、黒いタマゴに関係あるかもしれないだなんて。


――あ。ねぇ、ヨウちゃん。きょう、書斎で、もうちょっと調べてみようよ。ふたりでさがせば、もっとくわしいことがわかるかもしれないよ?――


 だけどヨウちゃんは答えないで、あたしの手から、バスケットボールを取りあげた。

 かごのてっぺんにあたしのボールを乗せて、バスケットボールでいっぱいになったかごをカラカラと押して、用具倉庫へ運んでいく。


――綾。悪いけど、とうぶん、うちに来んのはナシ――


――……え? なんで?――

――倉橋たちに、うちでカフェやってんのがバレた。あいつらが、店の客に来たときに、おまえとかち合ったら、あいつらにまで、書斎のことがバレるかもしれないだろ? 書斎のことは、ほかの誰にも知られたくないんだよ――

――で、でもっ!!  それじゃあ、ヨウちゃん、黒いタマゴはどうするのっ!?  まさか、あんなあぶないもの、知らんぷりして、ずっと砲弾倉庫に置いとくつもりっ? それに、もしも、タマゴが孵ったら……――


 自分で言って、ハッとなった。


 お父さんが、あたしにタマゴをわたした一週間後に、もうひとつのタマゴが産まれた……?

 それじゃあ、黒いタマゴも、産まれてから八年たったんだ。


 いつ、孵化してもおかしくない……。


――よ、ヨウちゃんっ! 早く対策たてないとっ!!――


 バンッと大きな音がして、あたし、ひゃっととびあがった。


 ヨウちゃんが、体育館の用具倉庫を閉めきった音。

 倉庫のとびらに手をかけたまま、ヨウちゃんはうつむいている。


――対策ってなんだよ? どっちにしろ、あんな恐ろしいもん、オレら小学生の手に負える代物じゃねぇだろっ!? ――


● ● ● ● ●




次のページに進む

前のページへ戻る


にほんブログ村


児童文学ランキング

スポンサーサイト



Comment 0

What's new?