
――どんなかは、書いてなかったから、わからねぇな。
あと、とうさんの日記を読んだら、八年前。綾に白いタマゴをわたした一週間後に、もうひとつ、タマゴが産まれる可能性があったらしい――
――可能性?――
――そ、可能性だけ。タマゴが産まれる予定だった日が、とうさんの命日――
――それって、つまり……――
あたしは、ぞくっとして、両腕でバスケットボールを抱きしめた。
……あたしの夢とつながりそう……。
もしも、タマゴがちゃんと予定日に産まれていて。それがヒメの感情で、黒いタマゴになっちゃったとしたら……。
ヨウちゃんのお父さんは、そのせいで……?
でも……言えない……。
だって、こんな元気のないヨウちゃんに、お父さんが亡くなった理由は、黒いタマゴに関係あるかもしれないだなんて。
――あ。ねぇ、ヨウちゃん。きょう、書斎で、もうちょっと調べてみようよ。ふたりでさがせば、もっとくわしいことがわかるかもしれないよ?――
だけどヨウちゃんは答えないで、あたしの手から、バスケットボールを取りあげた。
かごのてっぺんにあたしのボールを乗せて、バスケットボールでいっぱいになったかごをカラカラと押して、用具倉庫へ運んでいく。
――綾。悪いけど、とうぶん、うちに来んのはナシ――
――……え? なんで?――
――倉橋たちに、うちでカフェやってんのがバレた。あいつらが、店の客に来たときに、おまえとかち合ったら、あいつらにまで、書斎のことがバレるかもしれないだろ? 書斎のことは、ほかの誰にも知られたくないんだよ――
――で、でもっ!! それじゃあ、ヨウちゃん、黒いタマゴはどうするのっ!? まさか、あんなあぶないもの、知らんぷりして、ずっと砲弾倉庫に置いとくつもりっ? それに、もしも、タマゴが孵ったら……――
自分で言って、ハッとなった。
お父さんが、あたしにタマゴをわたした一週間後に、もうひとつのタマゴが産まれた……?
それじゃあ、黒いタマゴも、産まれてから八年たったんだ。
いつ、孵化してもおかしくない……。
――よ、ヨウちゃんっ! 早く対策たてないとっ!!――
バンッと大きな音がして、あたし、ひゃっととびあがった。
ヨウちゃんが、体育館の用具倉庫を閉めきった音。
倉庫のとびらに手をかけたまま、ヨウちゃんはうつむいている。
――対策ってなんだよ? どっちにしろ、あんな恐ろしいもん、オレら小学生の手に負える代物じゃねぇだろっ!? ――
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