《3》 デートスポットには、オシャレして 5 - ナイショの妖精さん2
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《3》 デートスポットには、オシャレして 5

  25, 2019 21:39
2019011701



 ベンチにふたりで座って、熱々の肉まんを、はふはふ言いながらほおばっていたら、肩の力が抜けてきた。


「な~、和泉ぃ~? きょう、オレ、ホントに和泉とふたりで来てよかったのかなぁ?」

「……え?」


 首をあげると、誠は目を細めて、窓の外のくもり空を見ていた。


「葉児が怒るんじゃない? 和泉って、葉児とつきあってんだろ~?」

「へっ!?  ち、ちがうよっ! な、なんでっ!? 」

「だって、仲いいじゃん。浅山でもいっしょにいたし」

「そのときはいっしょだったけど……そんな、仲良くなんかないよ……」


 あたし、ハァとため息をついた。


 だってさ。

 浅山で黒いタマゴに襲われた日から、あたし、ヨウちゃんちに行ってないんだよ。


 ヨウちゃん、ホントにどうしちゃったんだろ……?




● ● ● ● ●


 一週間たった今でも、ヨウちゃん、元気ない。

 リンちゃんたちにかこまれているときでさえ、ぼーっとしてることが多くて、そのうち、頭をつくえにふせちゃう。

 リンちゃんたちも、こまっちゃうみたいで。
 ヨウちゃんがつっぷしたら、そ~っとつくえからはなれてく。

 あたしは、どうしても自分の見た夢と重なっちゃって。

 体育のあと。体育委員でのこって、バスケットボールをかたづけているヨウちゃんをつかまえた。


 みんなはとっくに、教室に引きあげて、ふたりっきりになった、体育館。


――べつに。具合悪いわけじゃねぇよ。たんに、眠いだけ――


 ヨウちゃんは、あたしが話しかけても、背中を向けたまんまで、コートに落ちてるボールを拾ってた。


――黒いタマゴができるわけは、調べた。妖精のタマゴは、産んだ妖精の感情に、ものすごく影響されるらしい。それから、産んだあとの八年、孵化するまでに、置かれていた環境もタマゴに影響をあたえる。

つまり、純粋な、愛情を持った妖精が産んだタマゴは、白くなり、そのまま良い環境で八年たつと、中から出てくる妖精も、オレたちがよく知ってる、まともな白い妖精になる。

けど、産んだときに母親妖精の感情が荒れていたり、孵化するまでに、置かれていた環境が悪かったりすると、タマゴは黒くなり、出てくる妖精も、ふつうとはちがうものになる――


 バスケットボールを、ひとつひとつ、車輪つきのボール入れのかごにもどしながら、ヨウちゃんは、本でも読みあげるみたいに淡々と言う。


 あたしも、足元に落ちていたボールをひとつ、拾いあげた。


――ふつうとは、ちがうって、どんな……?――



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