
ベンチにふたりで座って、熱々の肉まんを、はふはふ言いながらほおばっていたら、肩の力が抜けてきた。
「な~、和泉ぃ~? きょう、オレ、ホントに和泉とふたりで来てよかったのかなぁ?」
「……え?」
首をあげると、誠は目を細めて、窓の外のくもり空を見ていた。
「葉児が怒るんじゃない? 和泉って、葉児とつきあってんだろ~?」
「へっ!? ち、ちがうよっ! な、なんでっ!? 」
「だって、仲いいじゃん。浅山でもいっしょにいたし」
「そのときはいっしょだったけど……そんな、仲良くなんかないよ……」
あたし、ハァとため息をついた。
だってさ。
浅山で黒いタマゴに襲われた日から、あたし、ヨウちゃんちに行ってないんだよ。
ヨウちゃん、ホントにどうしちゃったんだろ……?
● ● ● ● ●
一週間たった今でも、ヨウちゃん、元気ない。
リンちゃんたちにかこまれているときでさえ、ぼーっとしてることが多くて、そのうち、頭をつくえにふせちゃう。
リンちゃんたちも、こまっちゃうみたいで。
ヨウちゃんがつっぷしたら、そ~っとつくえからはなれてく。
あたしは、どうしても自分の見た夢と重なっちゃって。
体育のあと。体育委員でのこって、バスケットボールをかたづけているヨウちゃんをつかまえた。
みんなはとっくに、教室に引きあげて、ふたりっきりになった、体育館。
――べつに。具合悪いわけじゃねぇよ。たんに、眠いだけ――
ヨウちゃんは、あたしが話しかけても、背中を向けたまんまで、コートに落ちてるボールを拾ってた。
――黒いタマゴができるわけは、調べた。妖精のタマゴは、産んだ妖精の感情に、ものすごく影響されるらしい。それから、産んだあとの八年、孵化するまでに、置かれていた環境もタマゴに影響をあたえる。
つまり、純粋な、愛情を持った妖精が産んだタマゴは、白くなり、そのまま良い環境で八年たつと、中から出てくる妖精も、オレたちがよく知ってる、まともな白い妖精になる。
けど、産んだときに母親妖精の感情が荒れていたり、孵化するまでに、置かれていた環境が悪かったりすると、タマゴは黒くなり、出てくる妖精も、ふつうとはちがうものになる――
バスケットボールを、ひとつひとつ、車輪つきのボール入れのかごにもどしながら、ヨウちゃんは、本でも読みあげるみたいに淡々と言う。
あたしも、足元に落ちていたボールをひとつ、拾いあげた。
――ふつうとは、ちがうって、どんな……?――
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