《3》 デートスポットには、オシャレして 4 - ナイショの妖精さん2
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《3》 デートスポットには、オシャレして 4

  23, 2019 21:48
2019011701


 こうなったら、ヤケっぱち!

 とにかく話題を、押しまくれ~っ!!


「したよ~。ヤダ、わすれちゃったのっ!?  あのさ、誠。安くってもカワイイアクセサリーって、わりとあるんだよ。お母さん、誠があげたものなら、そういうのでも、よろこんでくれるんじゃない?」

「あ~、うん~。まぁ~」

「あたし、いいお店知ってるよっ! 教えてあげよっか? ねぇ、有香ちゃん、真央ちゃんも、今度の日曜日……」


「ちょっと待て。うちはパス」


 あたしの顔の前に、真央ちゃんの手のひらがのびてきて、会話をさえぎった。


「うちらもいっしょに、誠の買い物につきあえってんだろ? 悪いけど、日曜は塾」

「わたしも、バレエの発表会の練習があって……」


 え? え~っ!?


「だから、綾。習い事がなくて、毎日ヒマなのは、綾と誠ぐらいなんだよ。行くなら、ふたりで行きな」

「で、でも、ふたりっきりで買い物って。なんかさ……」



「中条君、きいたっ!?  和泉さん、日曜日に誠とデートだってぇ~っ!! 」


 教室の後ろで、リンちゃんの声がしたから、あたし「ぎゃっ 」ってとびあがった。


 リンちゃんてば、ものすごい地獄耳っ!


「……え……?」


 もそっと、ヨウちゃんが自分の腕から頭をあげる。

 琥珀色の前髪が、寝ぐせで半分あがってて、くしゃっとなってる。

 ぼ~っと教室を見まわして、琥珀色の目があたしでとまった。


「前から思ってたんだけどさ~。ふたりって、お似合いじゃない? 背もそんなちがわないし~。頭のレベルもいっしょだし~」

「ダメだって、アホなんて言っちゃっ! リンってば~」


 青森さんが、キャッキャって笑ってる。


 あっそ。ど~せ、アホですよ。


 琥珀色の目が一瞬ゆがんだ。

 って思ったら、ヨウちゃんは視線をそらして、ひじをたてて顔を隠した。


「……ふ~ん。たしかに、お似合いだな」


 ズン。


 言葉が胸につきささる。

 ヨウちゃんはもう、顔もこっちに向けてくれない。


「……和泉ぃ? 本気で行くの?」


 気づいたら、誠が眉をひそめて、あたしの顔をのぞきこんでいた。


「え? 行くよ。行こ!」


 だって、誠のお母さんのよろこぶ顔、誠に見せてあげたいもん。






 家からバスで十五分。埋立地ぞいに走ると、西湾ショッピングモールが見えてきた。

 横に長細い建物。その前には、建物の三倍はありそうな駐車場が広がっている。

 バスをおりると、冷たい潮風が、あたしのほおをなでた。ミニスカートのすそがはためいて、あわてて、腕でおさえる。

 真昼間なのに、冷蔵庫で冷やしたような雲が、もくもくと空をおおっている。

 きょうは寒そうだなって思ったから、ニーハイソックスをはいてきてよかった。上もしっかり、うすピンクのジャケットをはおってきたし。

 いつもよりほんの少しがんばって、オシャレな服を着てきたわけは。

 誠のためじゃなくてさ。

 カワイイ服のお店や、雑貨のお店がいっぱい入ってるショッピングモールに行くんだから、「気合入れなきゃ」って思ったから。


 誠がポンッと、あたしのあとから、バスをとびおりた。

 誠もきょうは、がんばってる。

 アメリカの野球チームの臙脂色のキャップをかぶって。だぼっとしたオーバーオールの中に、黄緑と白のボーダーのフードつきのトレーナーを着て。

 誠って、カラフルな色が似合うんだなって、ちょっと新鮮。

 ヨウちゃんなんか、白か黒かグレーかで、下はだいたいジーンズだからさ。オシャレしないでもモテるからって、カンペキ、服、手を抜いてる。


「あ、えっと。誠、ここに来たことある? この二階にアクセサリーのお店があるんだけどね。中入ってから、ちょっと歩くんだけど。えっと、じゅ、十分くらい?」


 ひとりで、とばしぎみにアワアワ言っていたら、となりにならんだ誠が、「あは」って笑った。


「きょうの和泉、な~んか、あわててる~。い~よ、店は逃げてかないし、ゆっくりいこ~よ」


 なんだ。いつもとかわんない。

 でもさ。ならんだときの距離とか、どれくらいの速さで歩いたらいいかとか、よくわかんないんだよね。

 ヨウちゃんはたいてい、スタスタ前を歩いて行っちゃうんだけど。

 誠は、となりを歩いてくれるんだもん。


「あっ! うまそうなもん、はっけ~んっ!」


 フードコートに入ったとたん、誠が行く先を指さした。


「和泉、肉まん好き? 買って来ていい~?」

「え? うん。好きだけど」


 あっという間に、誠は、肉まんのお店にならんでる。



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