《3》 デートスポットには、オシャレして 3 - ナイショの妖精さん2
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《3》 デートスポットには、オシャレして 3

  21, 2019 22:40
2019011701



 二時間目の学活の時間。

 担任の大河原(おおがわら)先生が、「卒業キャンプ」の班を決めるって言い出した。

 小学校生活の記念として、修学旅行とは別に、一泊キャンプをするっていうのが、うちの学校の伝統行事。

 だけど、行くところは毎年「浅山」なもんだから、子どもたちから、非難ゴーゴー。

 そんなさ。九月の校外学習でもつかわれたような、学校から歩いて三十分でつくような場所でさ。今さら、キャンプしてもね。

 寝泊りするのは、山すそにあるバンガロー。

 飯ごう炊飯でカレーをつくって、たき火をかこんで、キャンプファイヤーをして、きもだめしまでして。

 内容的には、もりだくさん。


「小学校の思い出行事だから、飯ごう炊飯の班は、おまえらの好きに決めていいぞ~」


 大河原先生がさけんだから、クラス中、ワッともりあがった。


「ただし~、ひと班、四人から五人で組むこと~」


 みんな自分の席から立ちあがって、後ろの子と手を取り合ったり、「いっしょに組もうぜ~」ってさけんだり。


「真央ちゃん、有香ちゃんいっしょにやろ~」


 真央ちゃんの席にとんでいったら、すでに有香ちゃんも来ていて、にっこりした。


「もちろん、綾ちゃん! あと、ひとりか、ふたりだね~」


 って、ここまではよかったんだけど。

 あたしたち、「う~ん」ってこまっちゃった。


 六年の女子は十二人。

 で、あたしたち三人グループのほかに、リンちゃんたちのグループが四人いて。その子たちは、ヨウちゃんをふくめて、いっしょの班になろうとしている。

 あと、のこり五人の女子たちは、五人でひとつの班になることを決めたみたい。


「マズイな、うちらあぶれてる……」


 真央ちゃんが太い腕を組んで、うなった。


「あ、お~い。和泉ぃ~」


 教室の前のほうから、能天気な声がした。

 見たら、誠が、おサルみたいに大きく手をあげて、ふっている。


「和泉の班に、オレらも入れてぇ~」


 誠のとなりにいるのは、山田。お腹がポコンとふくれてて、ジャガイモみたいに真ん丸な顔。誠とよくしゃべっているのを見るけど、女子に対しては無口かな。


「な~んか。男子は、葉児をのぞいて、四人と四人で別れるんだってぇ~。そしたらオレたち、あまるじゃん」


 誠がペタペタ歩いてくる。

 クリクリ目を見ていたら、きのうのことを思いだした。


 誠ってば。あたしのこと「天使」とか言ってたような……。


 ボッと、ほっぺが熱くなって下を向いたら、横で、真央ちゃんが小さな目をパチパチ。


「あれ? 綾って、誠と仲良かったっけ?」

「えっ!?  まぁ、いいじゃん! これで、五人の班になるなら」


 ホントは、ヨウちゃんと組みたかったなんて……言えないもんね。

 チラッとヨウちゃんの席を見たら、ヨウちゃんのつくえの向かいで、リンちゃんがメンバー表を書き込んでいた。

 だけど、当の本人は、両腕の中に顔をふせて、つくえの上につっぷしちゃって。

 本気で具合悪そうなんだけど。ほっといていいの、アレ……。


「なあなあ。オレさ~、どう考えてもわかんないんだけど。きのう見たのは、なんだったのかなぁ? なんかさぁ。和泉、浅山にいたとき、背中に羽なかった?」


 うわっ!?  ドキっ!


「羽? なんの話?」


 有香ちゃんまで、黒縁メガネを光らせて、首をつっこんでくる。


「羽なんかあるわけないじゃん。誠ってば、なに言っちゃってんのよっ!! 」


 おたおたしてるあたしに、「そりゃそうだろ~な~」って真央ちゃん真顔。


「おかしいな~。幻だったのかなぁ~?」


 誠はまだ、首をこきこきかしげてる。


「幻に決まってるでしょっ!!  そんなことより誠、お母さんのプレゼントはもう決めたのっ?」


 とにかく、話題をそらさなきゃっ!


「……え~? まだぜんぜん~。って、あれ? オレ、和泉にそんな話したっけ?」


 ヤバっ!

 誠からお母さんのプレゼントの話をきいたのって、妖精のときだった。




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