
「――うわっ!! 」
あたし、ベッドからとびおきた。
怖い、怖い、怖いっ !!
体中ギンギンに冷え込んで、ガクガクガクガク、縦に震える。
「ゆ、ゆ、夢っ!? 」
夢でしょ。これって、ただの夢だよねっ!!
最後に見た、真っ白に見開かれた、お父さんの目。
ヨウちゃんの目に似すぎてる~……。
教室に入って行ったら、あいかわらずガヤガヤとうるさかった。
黒板の下で、山田としゃべっている誠。大きな口を横に開いて笑ってる。
女子たちは今朝も、教室の真ん中の列、一番後ろのヨウちゃんの席が、集合場所っていうようにあつまっていく。
リンちゃん、ツインテールにキラキララメのシュシュをつけて。きょうも、髪型に気合を入れてる。
女子たちの中で、ほおづえをついて、窓のほうを見ているヨウちゃんに、ホッとした。
朝の怖い夢。
だけど、夢は夢。
「綾ちゃん、おはよ」
「綾、おはよ~」
「有香ちゃん、真央ちゃん、おはよう」
あたしもランドセルを背負って、窓際、前からニ番目の、自分の席へ歩き出す。
「中条君。中条君てば」
リンちゃんの声がきこえてきて、あたしは足をとめた。
「どうしたの? きょうは、ずっとだまっちゃって」
ほおづえから顔をあげて、ヨウちゃんがぼんやり、リンちゃんを見る。
「……ああ……悪い。今は、ちょっとひとりにしてほしい」
……え?
リンちゃんと青森さんが、顔を見合わせる。
そりゃ、おどろくよ。
だって、いつもはヨウちゃん。あたしといるときになにがあろうとも、学校では、「家と学校は別」って顔をして、ふんぞり返ってるんだから。
「中条君、具合悪いの? 保健室行く?」
「いや……へーき」
また、だまっちゃったヨウちゃんに、女子たちは、ふり返りふり返り、そろそろとはなれてく。
あたし、ランドセルの取っ手をぎゅっと両手でにぎりしめて、一歩、二歩、ヨウちゃんの席まで歩いて行った。
ふだん、ここの席には、あたし、自分から近寄らない。だって、リンちゃんたちのテリトリーだもん。
「……ヨウちゃん……?」
ヨウちゃんが、ハッとしたように、あたしを見あげた。
……え? 目赤い……。
それに目の下に、うっすら青いクマができてる。
ぞっとした。
ちがうよね。
夢と現実はちがうよねっ!?
ヨウちゃんの視線がふっと、窓にそれた。
……どうしよう。話しかけらんない。
浅山で手をつないでたのは、ついきのうのことなのに。
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