ナイショの妖精さん4 - 1ページ目24 - くまひろさんの創作部屋
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「……どうしたの?」 あたしが首をかしげると、大きな手が、パッとあたしのほっぺたからはなれた。「う、うあっ!!  あ、あ、綾のお母さんっ!」「……え?」 ヨウちゃんの視線の先は、坂の下。住宅街につづく道。 うちのママが、お出かけバッグを持って、ファーつきのロングコートを着て。ギスギスにやせた化粧の濃いおばさんと立ち話ししていた。「って、中村さんもいっしょなのっ!? 」「こ、こ、こ、こ、こんにちはっ!」 ...

「……え?」 ヨウちゃんが、眉をひそめた。「羽があれば、あたしの体は軽くなる。運動オンチのあたしが、くるくるとんだり、はねたりできる。妖精たちとだって踊れちゃう。じっさいに羽を出さなくてもいいの。羽があるってことを、自分が知ってるだけでいい。だって、そうすれば、心の中で、みんなに自慢することができるもん。『こんなあたしでも、スゴイところはあるんだ』って、思えるもんっ! だからあたし、羽はなくしたくな...

 ヨウちゃんにケータイをさしだしたら、ヨウちゃん、耳にケータイをつけて、息をすぅ~。「ふざけんな、誠っ!!  勝手に人を巻き込むなっ!! 」 きゃ~っ!! とつぜんの大声に、あたしの耳までキーン! そばで、鵤さんが苦笑いしてる。踊っていた妖精たちも、上空で目をパチパチさせている。「うわ~、うるっさいな~。耳がつぶれたらどうすんだよ。なんだよ、葉児もそこにいたの~?」「おまえ、もうインフルエンザ治って...

 白い太陽の光が、灰色の雲の切れ間に差し込んできている。 ヒースの茂みを流れていくのは、冷たい冬風。「……そんなことがあったんだね……」 鵤さんは、あたしたちの話をきき終わると、深いため息をついた。「妖精たちを黒くしていたモヤは、黒いタマゴの中身そのものだった。それが寄せあつまって、綾ちゃんにとり憑いた。葉児君は、それをなんとか外に引っぱりだして。引っぱりだされたモヤは、綾ちゃんと戦って、また消えたと...

「や、やめろ……」 ヨウちゃんが耳をふさいで、ちぢこまった。「もう……やめてくれっ!! 」「……ヨウちゃん……」「自分のせい」って言われつづけた人間がどうなるか。 あたし、知ってるっ!「いいかげんにしてぇ~っ!! 」 あたしはエルダーの枝をつきだして、モヤにとびかかっていった。 頭のてっぺんから足の下まで、バッと大きく、枝をふりおろす。 目の前の黒い影を、左肩から右わき腹まで、ぶった切る。 人型をしたモヤが...