「――で。今さらなんだけど、なんで綾は中条と別れたわけ?」 休み時間。 真央ちゃんがあたしの席にふり向いて、ほおづえをついた。「あ、この席ラクでいいな。前みたいに、お互いの席に移動して話す必要ないもんな」「わたしは、あいかわらず移動だけどね」 有香ちゃんはあたしの席の横にイスを運んできて、腰かける。 びっくりした。 真央ちゃんたら、とつぜんきくんだもん。「それ……やっぱり、言わなきゃいけない……?」 あ...
……ウソ……。 胃がきゅ~としめつけられた。 ヤダ……。あたし、帰りたい……。「和泉ぃ? もしかして自分の席、わかんない?」 誠があたしのかわりに、黒板の数字を確認してくれる。 その目が、あたしの席の横に座った後ろ姿を見て、それからあたしの顔にもどった。「……しょうがないよ。くじ引きだもん」 誠の声にうなずくこともできなくて、あたしはとなりから間を開けて、自分のつくえをおろした。 ヨウちゃんの肩が、一瞬硬...
花田中学校一年生は、ほぼ全員、花田小学校六年生からのもちあがり。 数人が、私立の中学に入学して、抜けたくらい。 場所だって、小学校と中学校は、歩いて五分もはなれてない。小学校は大通りから数分入った住宅街の中にあって、中学校は大通りぞいにある。 だから、おなじみのメンバーで。窓の外からは、なだらかな浅山の山並みを見わたせて。 でも、先生ははじめましての、蔦屋万里子(つたやまりこ)先生。 中学の校舎は...
校庭の桜の花が散っている。 外は春のあたたかい陽気に包まれているのに、あたしは花粉症でくしゃみばっかり。「綾ちゃん、おはよ~」 ふり向くと、有香ちゃんが教室に入ってきていた。有香ちゃんのとなりで、真央ちゃんも手をあげる。「オッス、綾! って、何度見ても、綾の制服姿、笑えるんだけど。なんていうか、服のオバケ?」 お腹を抱えて笑う真央ちゃん。真央ちゃんて、男言葉をつかうし、態度も男みたいなんだけど、...
★ナイショの妖精さん 6★● もくじ《1》 花田中学一年生 ⇒こちらからジャンプ《2》 カノジョとクラスメイトの境界線 ⇒こちらからジャンプ《3》 妖精と花火と綾桜 ⇒こちらからジャンプ《4》 忘却のゆくえ ⇒こちらからジャンプ《5》 天の川をわたって ⇒こちらからジャンプ● これまでのあらすじ *ネタバレ注意!!和泉綾と中条葉児は、花田小学校六年のクラスメイト。そして、「フェアリー・ドクター」。フェアリ...