《5》 真夜中のダンスパーティー 1 - ナイショの妖精さん1
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《5》 真夜中のダンスパーティー 1

  24, 2018 23:27
2018112401



 日がかたむいて、うす曇りの空は、ぼんやり、ぼんやり暗くなる。

 おい茂る木々に風が吹きつけ、葉は黒いシルエットになってゆれる。

 浅山の頂上近くに一部分だけ、ミステリーサークルみたいに、木々が植わってない場所があった。そこは一面、お花畑。

 お花畑の中に、古い赤レンガの遺跡がうまっている。

 ヨウちゃんのお父さんが日記に書いてた「ヒースの茂み」って、ここのことかな? 今は、うす闇に染まっちゃって、お花は赤紫じゃなくて、黒みたい。


「妖精さんたち……どこにいるの……?」


 ヒースの中におりたったら、硬い葉っぱがチクチクあたしの足をさした。


「お願い、出てきて……」


 はじめて空を飛んだせいなんだろうけど、なんだかすごく、息苦しい。
 呼吸するのも、つかれるくらい。


「……お願い……あたしも仲間に入れて」


 あたしはザッと、ヒースの茂みに両ひざをついた。

 やっぱり、おかしい。
 体が重たい。

 大きな鉛になっちゃったみたいで、その鉛が小さな心臓の上に、ず~んとのしかかってくる感じ。


「く……くるし……」


 たまらなくなって、ほっぺたまでお花畑につかりこんだ。


 なんでだろう?

 息ができない……。





「綾!」


 だれかが呼んでいる。


「綾っ!! 」


 五メートルくらい遠くに、だれかの黒いシルエットが見える。


 その下に、あたしの体が、花畑にうもれて横たわっていた。

 不思議な感じ。
 映画館で、スクリーンを観ている気分。

 ここにいる「あたし」は観客になっていて、花畑にうまってる自分の体と、その自分をのぞきこむ男子の影を、外側からながめているみたい。


「おい、綾っ! いったい、なにが起こったんだっ!?  さっきの羽はどこ行った? ま、まさか、死……」


 あ……この声。ヨウちゃんだ。

 あたし、ヨウちゃんをつきはなしたのに、浅山まで、さがしに来てくれたんだ。


 空を見あげたら、おぼろ月が、虹の輪をまとってた。


 いったいあたし、どれくらい眠ってたんだろう。

 一時間? 二時間?


 ヨウちゃんの右手が震えながら、あたしの顔に近づいていく。手のひらが、左のほっぺたをそっとなでる。人さし指の先が、くちびるにふれる……。


「って、な、なにしてんのっ!? 」


 さけんだら、「うわぁああっ!! 」って、ヨウちゃんが尻もちついた。


「で、で、出たっ! 妖精っ!! 」


 ガタガタ震えながら、こっちを見てる。




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Comment 2

kinoka  

はじめまして、こんにちは。
ランキングから訪問させていただきました。
40年ほど前、佐藤さとるさんのファンタジー小説に
夢中になっていたときのような気持ちになりました。
子供たちや昔の子どもたちに夢中になれる世界を展開してほしい♪ですね^^

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くまひろさん  

Re: タイトルなし

はじめまして。
こんな些細な場所に訪問いただきありがとうございます。
「ナイショの妖精さん」はとても長く9巻まで続きます。
このブログでも更新していくつもりですが、もしご興味ありましたら無料投稿小説エブリスタの方では、完結していますので、そちらを是非(*^-^*)

子どもが夢中になって読める児童書にしたいと思って書きました。ご感想とてもうれしいです<(_ _)>

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