土曜の夜にパパとママにつれられて、家に帰って。さんざん怒られて。 日曜日は、ずっと自分の部屋で泣いていた。 なのにまだ、目に涙があふれてくる。歯をくいしばっても、こらえられない。 ちゃんとうつむいてなきゃ。月曜の昼間っから、学校で泣いてることが、みんなにバレちゃう。「ねぇねぇ、和泉さん、だいじょうぶ?」 音楽室に向かうとちゅう。廊下を歩いていたら、女子たちに呼びとめられた。「……え?」 胸に音楽の...
六年生の教室は、今朝も騒がしい。「おはよう~」って声。「土日、なにしてた~?」って声。「家でゲーム」とか「サッカー」とか、そんな声が答える。 あたしは、教室の中に入らないで、ドアの前で立ちどまっていた。 あたしのおでこには、絆創膏がはられてる。 スカートから出ている左ひざにも、絆創膏がはられてる。 アホ毛はあいかわらず、頭のてっぺんでつっ立っていて。これじゃ、いつも以上に、ドジなアホっ子キャラ、...
「綾、ほかに痛いところはないか?」 ヨウちゃんは、あたしの左肩に、レモンバームの塗り薬を塗ってくれた。「えっと……。あとは、転んだり、枝に打ちつけたりしたところ。レモンバームは妖精の羽につけられた傷にしか、効かないんだったよね」「……ああ……ごめんな」 薬が効かないのは、ヨウちゃんのせいじゃないのに。ヨウちゃんはしゅんっと、肩を落としてる。「へ~き、へ~き。どうせすぐに治るって」「けど、おまえ、アザにな...
なに、その……目……。 あったかくて、やわらかくて。でも、ゆがんでて、今にも涙があふれだしそうな。「綾……大事にしろよ。羽」「……うん」「オレのかわり……なんだぞ……」 声が震えだす。ヨウちゃんは歯を食いしばって、またうつむいた。「うん……」 ズキズキと胸が痛い。 肩の傷より、手や足の傷より、胸のほうがずっと痛い。 あたしの目から涙があふれて、ほおを伝っていく。 そのほおに、ヨウちゃんは土のついた手のひらをそ...
ふわっと、ヨウちゃんのまわりを金色の光が取り巻いた。 金色のりんぷんっ !? ヨウちゃんのほおを、琥珀色の髪を、金色の粒が包んでいく。 あたたかな金色の粒。 まるで生きているかのように。ふわふわとヨウちゃんのまわりをただよって、一粒、一粒、空にのぼって消えていく。「……とうさんっ!」 ヨウちゃんが肩を震わせた。「とうさん……ごめん……。勝手に墓場からよみがえらせたりして、ごめんっ! ハグの入れ物にして...