くまひろさんの創作部屋 - トップページ
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 なに、その……目……。 あったかくて、やわらかくて。でも、ゆがんでて、今にも涙があふれだしそうな。「綾……大事にしろよ。羽」「……うん」「オレのかわり……なんだぞ……」 声が震えだす。ヨウちゃんは歯を食いしばって、またうつむいた。「うん……」 ズキズキと胸が痛い。 肩の傷より、手や足の傷より、胸のほうがずっと痛い。 あたしの目から涙があふれて、ほおを伝っていく。 そのほおに、ヨウちゃんは土のついた手のひらをそ...

 ふわっと、ヨウちゃんのまわりを金色の光が取り巻いた。 金色のりんぷんっ !? ヨウちゃんのほおを、琥珀色の髪を、金色の粒が包んでいく。 あたたかな金色の粒。 まるで生きているかのように。ふわふわとヨウちゃんのまわりをただよって、一粒、一粒、空にのぼって消えていく。「……とうさんっ!」 ヨウちゃんが肩を震わせた。「とうさん……ごめん……。勝手に墓場からよみがえらせたりして、ごめんっ! ハグの入れ物にして...

 暗い木々が開けた。 星空と丘が目の前に広がる。 墓石たちが黒い影をつくってたたずんでいた。 その中央で、巨木が両腕を天にのばしている。「……外人墓地……」「綾っ!」 人影が走ってきた。 ききなれた声に安心して、あたしはその場にへたりこんだ。「……ヨウちゃん」「だ、だいじょうぶかっ!?  あいつに何されたっ!?  肩? 肩が痛いのかっ!? 」「ヨウちゃん、あたしのことはいいから。早く儀式……」 あたしは、妖...

 頭の上で、チカチカと銀色の光が舞った。 あたしのりんぷん? ちがう。 あたし今、羽を出してない。 じゃあ、だれ……? 銀色のりんぷんを撒きながらやってくるのは、トンボの形の羽をつけた手のひらサイズの小さな子たちだった。 十人ほど一列になって、小さな体でするりするりと、木の幹をかわしていく。「チチ……ヒメ……」 みんな、どうしたんだろう? 顔をうつむけて、いつものにぎやかなおしゃべりもきこえてこない。 ...

 背中越しにハグが近づいてくる。釣りざおのように肩の上にかついでいるのは、妖精の羽のついた杖。「……なん……で? 杖は、崖に落ちていったはずなのに……」「だからね、この杖には、ゴールデンロッドのパウダーがふりかけられているんだよ。何度この杖を失くしても、どんな入れ物に入っていても、わたしの意識があるかぎり、この杖はわたしの手元にもどってくるだろう。いまや、この杖とわたしは一心同体。フェアリー・ドクターの...